ねずみの嫁入り

(2011.5.28)
去年の子供の幼稚園の劇は「ねずみのよめいり」でした。

 

かわいいねずみの「チュウ子」がいて、お父さんが世界で一番強い人と結婚させようと思って、太陽にお願いに行きます。そうすると太陽は、「自分より雲の方が強い-太陽は雲に隠されてしまうんだ」と言います。雲のところに結婚のお願いに行くと、「自分より風の方が強い-雲は風に吹き飛ばされるんだ」と言います。それでは、と風のところにお願いに行くと、「自分より壁の方が強い-風は壁に跳ね返されてしまうんだ」と言います。そして壁のところにお願いに行くと、ちょうどその壁をカリカリ削ってネズミのチュウ太が出てくる。そしてお父さんは、「ああ!世の中で一番強いのはネズミだったんだ!」と納得して、チュウ子はチュウ太とめでたく結婚です。

 

童話作家を目指す僕としては、この「ねずみのよめいり」は本当に教科書のようなすばらしい物語です。まずネズミとか動物を擬人化するのはごく普通の手法だとして。ネズミを太陽と結婚させるとか。これは全くありえないですね。ありえない設定とストーリー進行こそが童話の醍醐味。僕がチュウ子のお父さんなら絶対に太陽とは結婚させたくない。チュウ子が黒焦げになっちゃうよ。

 

学生時代、外国で一時期ネズミのいっぱいいるアパートに住んでいました。ネズミはオーブンの下がお気に入りみたいで。いつもオーブンの下からピョコっと顔を出してきょろきょろして。そして僕が動かないとわかるとチョコチョコ出てくる。かなりかわいかったんだけど。

 

 

ある日、オーブンでピザを焼いて、焼きあがるのを楽しみにしつつビールを飲んでたら、オーブンからすごーく何とも言えない、動物の焼け焦げるにおいが・・・

 

まあオーブンと結婚するネズミもいるようだから、太陽と結婚するネズミもいるかもしれない。ちなみに電子レンジにゴキブリが入ってたこともあって、レンジでチンした後に、レンジのふたを開けると中からゴキブリが元気に出てきました。ゴキブリってどんな仕組みになってるんだ?この世で一番強いのはゴキブリかもしれない。チュウ子のお父さんに教えてあげなくては。

 

さてさて、ネズミの嫁入りの話。太陽から続く、よくわからないストーリー展開もすごいです。太陽→雲→風→壁→ネズミって、客観的にみると、強さ的に、明らかにどんどんグレードダウンしていってるんだけど。実はみんなチュウ子と結婚するのが嫌だったんでしょうね。そして変な理屈をこねて他人に押し付ける。でもチュウ子のお父さんはかわいそうに、みんなに言いくるめられちゃって、たらい回しにされながらどんどんわけのわからない方向に向かっていく。ある意味、人間社会でも見られるシチュエーションかもしれません。嫌な仕事を押し付けられそうになって、「いやー、私なんかにそんな大役、とてもとても務まりません。どこどこの○○さんは、若いんだけどとても才能があって・・・」みたいな感じで。自分より能力不足の人を無理やり持ち上げて仕事を押し付ける戦法。これは今後、「ネズミの嫁入り戦法」と呼びましょう。

 

太陽から続く一連のたらい回しの中で、僕が特に注目しているのが壁です。壁はすごい。壁なんかと結婚して、楽しいのかな?

 

僕としては、チュウ子は壁と結婚してほしかった。壁とネズミで、どのような幸せを築けるのか?すごく奥が深い。太陽とか雲とか風だったら、なんとなくネズミとの幸せな結婚生活を描くこともできそうな気がするんです。チュウ子が風に乗ってデートしたり。チュウ子が死んだあとには千の風になって子供たちを見守ったり。でも壁はどうだろう?壁の横に、チュウ子がいます。ずーっと。何年も。壁は無口だけど本当に優しくて。チュウ子を守ってくれて。でも本当に無口で。全く動かないし。そして千の壁。

 

カベ、強くて優しくて無口で誠実そう。ほんわかするラブストーリーが生まれそうな気がしてきました。全米が泣きそう。

2011年05月28日