浦島太郎の後日談

今日の記事、掲載自体は(途中でホームページの作り方がわからなくなってしまったので)2025年3月9日なのですが、もともとのお話は2022年の元旦の夜の、娘へのお話です。

 

浦島太郎の後日談です。

 

浦島太郎は竜宮城で過ごし、帰ってから玉手箱を開けて年齢を吸い取られて、おじいさんになってしまいました。実は竜宮城では、その浦島太郎から吸い取った年齢を大切に保管していて、でもちょっと保管に持て余しています。という設定で、浦島太郎の100年後の世界のお話。

 

あるところに、おじいさんが山に柴刈りに行き、おばあさんが川で洗濯をしながら、細々と暮らしている老夫婦がありました。でもこういう生活は永遠には続きません。おじいさんは歳で柴刈りをするのが難しくなってきました。腰が痛い。動くのがツラい。働けない。

 

おばあさんはまだ元気で動けますが、老々介護するほどの余裕はありません。老人2人ではどうにもならない。2人は本当に困っていました。そして不安でした。そこである日、おばあさんが川で見つけた子亀に相談しました。すると子亀は、「親に相談してみる」と言ってくれました。

 

しばらく経って、亀の親子が3人で、おじいさんとおばあさんを迎えにきました。亀たちは言います。乙姫様に相談しましょう。普段は人間をむやみに助けないんだけど。今回はかわいそうだし、何かの縁なので、今回だけ特別。

 

竜宮城では乙姫様が、おじいさんとおばあさんに、「ご希望なら若くしてあげましょうか」と言いました。100年くらい前に、浦島太郎という人から吸い取った人間の年齢が、この玉手箱の中に入っています。この玉手箱の中の煙を2人で吸うことで、2人とも若くなれるでしょう。もしそうしたいならどうぞ。この玉手箱を差し上げます。

 

ただし、若くなるのは必ずしも幸せではないよ。歳を取って、老いて、病んで、死ぬのは人の定めです。若くなるということは、もう一度、老いて死に向かう不幸を背負うことでもあります。私は老いません。実は私も老いてそのうち死ぬでしょうが、私は1000年も2000年も生きるので、人間の目から見たら老化しないように見えるでしょう。でも実は私も、私たちの時間軸では老いています。私も人間と同じつらさを味わっています。

 

おじいさんもおばあさんも、どのみちこのままではどうにもならず、どうしようもないので、2人は玉手箱を貰って若返ることにしました。乙姫様にお礼を言って、亀の親子が2人を家まで送り届けてくれました。

 

おじいさんとおばあさんが家で玉手箱を開けると、中から煙がぶよぶよっと出てきて、そしてその煙を吸った2人は、なんと20歳くらいのカップルに若返りました。

 

元おじいさんと元おばあさんは、竜宮城から戻って以来、とても頑張って働きました。そしてこの2人、単なる若いカップルではなく、スーパー若者になっていたのです。


なにしろ、長く生きた知恵と経験を持っていて、なおかつ若い体力を持っている。どうにもならない状況から不思議な力で救ってもらった感謝もある。2人は素晴らしい農業ができて、畜産もして、裕福になっていきました。そして、それを聞きつけて、2人の元にはいろんなところから自然と人が集まってきました。やがてそこには村ができ、元おじいさんとおばあさん、今は力も知恵も経験も豊富なすごい若者カップルは、村のリーダーになりました。

 

村はすごく発展しました。でも、この村は、できるだけ豊かさを隠していました。豊かさがバレれば、ろくなことがない。承認欲求は敵です。殿様から目をつけられて、たくさん年貢を取り立てられるかもしれません。きっとありったけ搾り取られる。だからこの村は、できるだけ質素で貧乏な村を装っていました。

 

でもそれでも、ウワサというのは止められないものです。やがてこの村が裕福なことは、お殿様にばれてしまいました。城からお殿様が視察に来て、「この村からはたくさん年貢を搾り取れるぞ!」となりました。

 

困った元おじいさん(今は若者で村のリーダー)は、お殿様と交渉しました。この村の年貢を搾り取るのは得策ではないですよ。1回搾り取って終わります。でも、もしこの村をいじめなければ、その代わりに私が城で働きましょう。お殿様の部下として、私は国中の村を、この村のように豊かにできます。そうすると、年貢が増えて、この国が潤います。国民も潤います。お殿様も国民にすごく感謝されるでしょう。

 

これでみんなが幸せになれると思いますが、どうでしょう?ただし、私は村のリーダーなので、城で働くことになったら、この村の住人は困ります。今より生活は確実に苦しくなる。だから私が城で働く場合には、交換条件として、お殿様にはこの村からは未来永劫、年貢を取らないでもらいたい。その条件なら、たぶん村人達も納得して、私と妻を城に送り出してくれる。

 

お殿様は、元おじいさんの提案に乗りました。元おじいさんの提案は、論理的だし、実績もある。とても説得力がありました。

 

元おじいさんと元おばあさんは城に移り住み、殿様の部下として一生懸命、国のために働きました。もともとこの2人は働き者なのです。

 

2人の働きで、国はぐんと豊かになりました。長年の知識と経験、それと若い体力がものを言いました。お殿様は老いました。残念なことに、お殿様にはお世継ぎがいませんでした。そこでお殿様は、「この国をこの2人に譲りたい」と言って、引退しました。この時には、元おじいさんとおばあさんは、お殿様から絶大な信頼を受けていたのです。

 

元おじいさんはお殿様になり、おばあさんと一緒に国のリーダーになりました。人は老いて病んで死ぬ。これは定めで、誰もこの定めから逃れられない。老いればどんな状況になるのか、どんなにツラくて心細いのか。2人はよく知っています。そこで2人は、老いて働けなくなっても、せめて誰もが安心して余生を過ごせるように、この国に年金のような制度を作りました。

 

この制度のおかげで、この国の老人は少なくともこれまでよりは幸せになりました。年金がすべてを解決するわけではないけど、だいぶんと安心感を与えてくれます。いずれはこの幸せが普通になって、「自分たちは不幸だ」と感じる時代が来るかもしれません。でも、少なくとも今のところは、前より状況がよくなった分、みんな幸せ。

 

元おじいさんと元おばあさんもやがて年老いました。2人は城の中の優秀な人を次のお殿様に指名して、引退しました。もう自分達はそれほど働けない。でも年金制度をしっかり作ったので、働けなくても安心して2人で老後の余生を過ごすことができる。

 

あの時若返ってよかった。と、2人は幸せにひっそりと余生を過ごしましたとさ。

 

おしまい。

 

 

2022年01月01日